【書評】ファスト&スロー(上)

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ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

人間の意思決定の原理とは何か?認知心理学と社会心理学の新たな発展を踏まえて、マーケティングに活きる行動経済学を学ぶことが出来ます。
なぜSEOのブログでこの書籍を紹介するのかと言いますと、SEOのためにテキストをライティングする、コンテンツを考える、どのキーワードで上位表示させるのかを考える面において、本書で解説する行動経済学を知っていると相手の目線で物事を見ることが出来るようになります。

ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
作者:ダニエル・カーネマン
訳者:村井章子
出版社:早川書房
発売日:2012/11/25
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はじめに

ハロー効果アンカリング効果などという言葉を聞いた方は多いのではないでしょうか。

ハロー効果とは、簡単に言うと最初の第一印象(容姿も含む)でその後の印象がある程度決まってしまうことです。

ポジティブ・ハロー効果の例として、次のようなものがある。
・Aさんが有名大学卒業しているということと、ビジネスパーソンとして優れているかどうかは本来関係のないことであるが、実際に確認などをせずに、Aさんを優れたビジネスパーソンであると評価する。
英語ができることと、仕事ができることは本来、関係のないことであるが、実際に確認などをせずに、英語のできる人を優れたビジネスパーソンであると評価する。
(コトバンクより引用)

アンカリング効果を有効に使うことでの単純な例を挙げます。良く聞く話かもしれません。
売価が5,000円の商品があったとして、そのまま販売するのではなく定価を10,000円とし期間限定で5,000円と見せることで顧客の購買判断を操作することもできてしまいます。

このように、心理学が及ぼすマーケティングへの影響は多岐に渡ります。他にも様々な効果がありますが、それは本ブログで少しずつ具体的な使い方とともにお伝えできればと考えています。
心理学の本は数も多く、どの本を買うか迷ってしまうことでしょう。この本は読み進めるのに時間はかかりますが、それでも一つ一つの心理について詳細に記述されており、読み切ったときの知識量は必ず糧になることでしょう。
それでは、早速書評に移ります。

あなたの直感を試す5つのテスト

あなたは以下の質問に答えられますか?これらの質問には様々な心理要素が仕掛けられており、直感と本当の答えは異なるものになるということが本書を読むことで分かるようになります。

  1. 政治家や芸能人は、離婚や不倫をする確率が平均より高い?
  2. ファンドマネジャーや政治評論家の将来予測は素人より確度が高い?
  3. 優れた社長やCEOは確実に業績を向上させる?
  4. 「ビジョナリー・カンパニー」のようなビジネス書は役に立つ?
  5. 事故と糖尿病の死者数はどちらが多い?

ファスト&スローを読むことで得られる知識

本書では、以下のような知識を豊富に得ることができます。以下はあくまでも一部です。ボリュームが多いため、じっくりと読み進めることをオススメします。
ちなみに、ダニエル・カーネマンのプロスペクト理論は下巻で取り扱われているため、上巻では言及されていないためご注意ください。

  • 確証バイアス
  • ハロー効果
  • 感情ヒューリスティック
  • 少数の法則
  • アンカリング効果
  • 利用可能性ヒューリスティック
  • バイアス(偏り)を取り除く方法

序論

ヒューリスティックとバイアス
人間の行動には、バイアス(偏り)のかかったヒューリスティック(必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることが出来る方法)に頼った判断が用いられることが多いです。しかし、それはときに間違った判断を起こすことがあります。難しい判断を迫られると、人はより簡単な問題に質問を置き換え、それに対して直感的に答えてしまいます。例えばKというアルファベットは「先頭に来る場合」「3文字目に来る場合」どちらの方が単語数が多いか?という質問に対して、ほぼ全ての人が前者を選択するでしょう。先頭の文字を探す方が明らかに容易なためです。
しかし実際には3文字目にKが入る単語の数を調べたわけではないし、先頭にKが来る数を調べたわけでもないので答えようのない質問のはずです。
このように、ヒューリスティックに頼った判断には予測不可能なバイアスがかかっていることがあるのです。

感情ヒューリスティック
熟考や論理的思考を行わず、好きか嫌いかだけに基づいて判断や決断を下すこと。

利用可能性ヒューリスティック
取り出しやすい記憶情報に優先的に頼って判断すること。記憶に残っているほど頻度や確率を高く見積もる傾向にある。

二つのシステム

登場するキャラクター

システム1:自動的に高速で働き、努力は全く不要か、必要であってもわずかである。また、自分の方からコントロールしているという感覚は一切ない。

システム2:複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。システム2の働きは、代理、選択、集中などの主観的経験と関連づけられることが多い。

システム1とシステム2は相互に作用する。
システム1とシステム2は目覚めているときは常にONになっており、1は自動的に働き、2は通常は努力を低レベルに抑えた快適モードで作動しています。このような状態では、システム2の能力はごく一部でしか使われません。システム1は、直感を元にシステム2に情報を供給します。その結果、システム2がゴーサインを出せば意志的な行動に変わります。大抵の場合はシステム1の情報が正しいため、システム2は無修正かわずかな修正を加えただけで受け入れることになります。

システム1が処理できない困難な状況に遭遇すると、システム2が応援にかり出され、緻密で的確な処理を行います。
これは、システム1が想定していない世界のモデルに反した出来事が察知されて、システム2の出番になったからです。
システム1の世界では、デスクスタンドがジャンプしたり、ゴリラがコートを横切ったりはしないのです。
ゴリラ実験からは予想外の出来事を感知するためには、ある程度の注意力が必要であるということが分かりました。
(システム1が作動するにはある程度の注意力が必要。他の事にとらわれていると普段なら発見できるような単純な動作や事象さえも気づかないことがある。)
システム2が考えたり行動したりすることの大半はシステム1から発せられます。
物事がややこしくなるとシステム2が主導権を握ります。最後の決定権を持つのはシステム1ではなくシステム2です。
システム1と2の分担は効率的にできており、通常はシステム1が慣れ親しんだ状況に対しては的確な判断、予測が行えるからであり、この場合はシステム2は使われることはありません。

また、システム1は常にONであるため、切ることができません。
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上記が同じ長さであることを’知って’いても、頭の中では下が長く見えて見えてしまうことは避けられません。
下が長いと感じてしまうのはシステム1のせいであり、システム2が同じ長さであるとシステム1に指令を下します。
このような錯覚に逆らうことは、見た目の印象を信用しないことが重要で、錯覚のパターンを認識し、必要なときにそのパターンを呼び出せなければなりません。それでも、私たちは片方の線が長く見えているのですが・・・。

注意と努力

瞳孔が知的努力を敏感に示すバロメータになる。これは心理学者であるエッカード・ヘスが論じています。これは、知的努力に対する身体的な反応は感情的覚醒とは異なることを示唆している。2桁同士のかけ算など、知的努力を要する課題に取り組んでいる際は瞳孔が大きく開いています。逆に、答えを出すか、問題から諦めてしまうと瞳孔は開くのをやめ、収縮するのです。また、ありふれた会話では努力が必要ではなく瞳孔が開くことはありませんでした。脳が活発に動作しているとき(システム2)、人間は実質的に目が見えなくなっていることが分かりました。人が集中しているときには、ある”動き”をしても気づかないことが多々あったのです。作業の初めか終わり頃に、ある動きが出ると被験者は気づきますが、知的努力が最高潮に達している作業半ばの時点では約半数が見落とすという結果が出ています。別の物事を見落とす確率は、瞳孔の開き具合とリンクしていることもこの調査で明らかとなっています。
集中しているときは周りが見えなくなる。だったらちゃんと見てくれる最初と最後に広告を載せるようにしよう。など、マーケティング分野で何気なく気付かぬ内に導入されている手法だったりします。

またシステム2は、どの家にも設置されている電力メータのようなものです。

電力メータは、電子レンジやドライヤーなど、作業量に左右されます。ただし、その器具に必要な電力以上は消費されません。システム2も電気回路も能力が限られている点では同じですが、過負荷に対する反応は異なります。電力需要が大きくなりすぎるとブレーカーが落ち、全ての電気製品は使えなくなりますよね。しかしシステム2は最も重要と判断したことは保護しつつ、残った予備電力をその時々の別のタスクに振り向けるのです。

このように精妙に注意力を配分する動きは、長い進化の歴史を通じて磨き上げられてきたと考えられています。緊急時にはシステム1が事態を掌握し、自分の身を守る行動を最優先させます。運転中に路面の油膜でタイヤが滑ったとき、何が起きたか認識する前に、対処している自分に気づくことでしょう。

飛び抜けて頭のいい人は、同じ問題を解くのに通常の人ほど努力しないことが瞳孔測定や脳の活動からも確かめられています。よく言われる「最小努力の法則」は、肉体的な労力だけでなく認知能力にも当てはまるのです。この最小努力の法則とは、ある目標を達成するのに複数の選択肢が存在する場合、最も楽な選択を選ぶことを指します。

「実行制御(executive control)」

心理学で、タスク設定を導入し完了するプロセスのことを言います。これはシステム2に備わっている能力であり、慣れていない作業を指示されたとき、それに応じられるよう記憶をプログラムすることができるというものです。
我々が一度も行ったことがないタスクを指示されてもシステム2はうまくやってのけます。タスクを上手くこなせるよう注意力をセットし、実行するにも努力が必要です。しかし何度もやれば確実に上達します。このことが実行制御です。

怠け者のコントローラー

心理学者ミハイ・チクセントミハイ

「幸福」「創造性」「主観的な幸福状態」「楽しみ」の研究(いわゆるポジティブ心理学)を行った学者です。著書『楽しみの社会学』でフローの概念を提唱したことで知られています。
人は、ときに長時間にわたって、それも意思の力を特に発揮しなくとも凄まじい努力を続けることが出来ます。これをフロー状態と呼びます。

ゆっくりと歩いているときに複雑な問題を問いかけられると、たぶんその場に立ち止まって考えてしまうでしょう。
ぶらぶら歩きながら考えることはできますが、短期記憶に負荷をかけるような知的作業をすることはできないのです。

時間に追われながら複雑な論拠を組み立てなければならないときは、じっとしていたいし、立っているより座っている方がいいでしょう。もちろん遅い思考が常に極度の集中や複雑な情報処理を伴うわけではないです。
ぶらぶら歩きより速いペースになると、散歩はすっかり様子が変わってしまいます。早歩きになった途端に、思考能力は明らかに低下するのです。ペースが上がるにつれて、注意力は歩くことに向いてしまい、意識的に速いペースを保とうとします。それにつれて一連の考えを結論に導く能力は損なわれていくことが実証されています。

まとめ

いかがでしょうか。このように、人間のさりげない行動には全て理由があり、それらは二つのシステムによって支えられているということが何となく分かっていただけたのではないでしょうか。
上述した内容はあくまでもさわりの部分ですので、興味のある方はまず上巻だけでも手に取ってみられると、人間の深層心理が明らかになり、今後のサイト運営に大きく利益をもたらす知識を得ることが期待できます。

ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
作者:ダニエル・カーネマン
訳者:村井章子
出版社:早川書房
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